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謎解き 村上春樹(感想・考察・書評)    (ネタバレあり)

村上春樹作品の謎解き(感想・考察・書評)(ネタバレあり)

「ノルウェイの森」書評③~オルフェウスの神話

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     激しくネタバレしています。

 

ギリシャ神話の中のオルフェウスの神話は、「ノルウェイの森」の下敷きになっていると思われます。オルフェウスの神話を知らない人のために解説します。

彼は竪琴の名手で、彼が竪琴を弾くと、周りの人たちばかりなく森の動物たちも耳を傾けたといいます。彼は妻のエウリディケと仲睦まじく暮らしていましたが、ある日エウリディケは毒蛇にかまれて死にます。深く悲しんだオルフェウス妻を取り戻すために冥界に入ります。三途の川(日本神話はギリシャ神話と多くの共通点があります。)の渡し守カロンは彼が竪琴を奏でると黙って彼を渡します。地獄の番犬ケルベロスも彼が竪琴を奏でるとおとなしくなります。やがて、彼は冥界の奥深くまで降りていき、冥王ハーデスと面会します。

彼は、エウリディケの返還を懇願します。これに対して、冥王ハーデスは「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはいけない」という条件を付け、エウリディケをオルフェウスの後ろに従わせて送ります。地上に向けて歩き続けるオルフェウスに疑心暗鬼が訪れます。冥王は俺を騙しているのではないか、後ろについてくるのはまったくの別人なのではないか。疑心暗鬼は道を進むにつれて重くのしかかります。やがて目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、ほっとしたオルフェウスは思わず後ろを振り向きます。一瞬、妻の姿を見ますが、彼女は冥界の奥深くに吸い込まれて消えてしまいます。これがエウリディケとの最後の別れになります。彼は妻を取り戻すのに失敗したのです。

彼は、再び降りて行き三途の川の渡し守カロンに竪琴を奏でますが、今度は、渡し守は首をたてにふらずどうしても冥界に渡してくれません。あきらめて彼は地上に戻ります。

妻を失ったその後オルフェウスは「死んだように」生きます。そういいながらもアルゴ船探検団に加わり、味方の危機を救ったりするのですが。妻を失ったオルフェウスは女性との愛を絶ちます。女になびかないオルフェウスは、マケドニアで狂乱する女たちに襲われ八つ裂きにされ殺されます。これには、ディオニュソス神の怒りがあったとされます。

 

ノルウェイの森」では主人公が直子を取り戻すために、阿美寮へ赴き彼女を救おうとしますが、失敗し直子は自殺します。しかし、オルフェウスの神話では、彼が失敗した原因は「決して振り返ってはいけない」という約束を破ったことであるとはっきりしているのに対して、主人公は自分が失敗したのは分かっているのですが、自分がいつ「振り返ったのか」、何の行為が「振り返った」ことになったのか分かりません。この小説は主人公が、何が「振り返った」行為だったのかを探る旅でもあります。

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