「ダンス・ダンス・ダンス」書評~③ ユキ
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「ダンス・ダンス・ダンス」にはユキという少女が登場します。彼女は霊感のようなものがあり、そのため周りの子ども達から気持ち悪がられ、いじめられ、学校に行かなくなります。両親(牧村拓、アメ)も親の責任を果たすことができないような人たちで、彼女はいつもひとりぼっちです。おまけに中年の男(34歳は中年じゃない、ひどい)である主人公に「勉強を教えない家庭教師のような」役(「職業的男性乳母」?)をやらせようとするなど、とことんずれた親達です。
およそ接点のなさそうな主人公とユキですが、彼らは孤独であることで繋がっています。彼女は孤独であり、孤独な人生が辛く大変なものあることを知っている主人公は、彼女を助けようとします。この小説での主人公とユキの交流はこの小説で一番好きな箇所です。
しかし、いつまでもこうした何もせずにのんびり生きることができる世界は続きません。誰しもいつか現実世界に帰らなければいけません。
彼女は、キキを殺した犯人をあてます。しかし、その事実は主人公を傷つけるものでした。これは必要なことでしたが、彼女は自分の霊感が主人公を傷つけたことが分かります。そのことによって彼女も傷つきます。
「『あなたすごく良い人だったわ』と彼女は言った。どうして過去形で話すんだ、と僕は思った。」
彼女は犯人を主人公に告げるという役割を果たし、物語から退場します。(といっても、この後も少し登場しますが。)主人公もユキもそれぞれの現実世界に戻らなければいけません。その前に主人公には、この後五反田君との「訣別」をしなければいけませんが。
彼女が現実世界に戻る(家庭教師をつけて勉強する)ことを決めたのは、映画で五反田君が先生をやっているシーンを見たからだというのがなにか象徴的です。五反田君も俳優として何かの役割を果たせたということでしょう。
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